明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「……恋人って、何をするのかよく分かりません。」

思わず本音を口にすると、桐島中尉は穏やかな笑みを浮かべ、私を手招きした。

「はい……」

近づいた瞬間、ぐっと腕に引き寄せられる。

「どうかな。」

強くも優しい抱擁。

軍人らしい逞しさと、私を守ろうとする温もりが伝わってくる。

「他の人は抱きしめませんから。雪乃さんだけが……俺の恋人ですよ。」

「……はい。」

胸の奥が甘く震える。

恐る恐る顔を上げると、彼の瞳がまっすぐに私を見つめていた。

逃げられない、けれど逃げたいとも思わなかった。

「あ……」

声にならない声が漏れた瞬間、彼の顔がゆっくりと近づいてきた。

やがて唇が重なる。

最初は触れるだけの、静かな口づけ。

けれど次第に熱がこもり、全身が溶けてしまいそうになる。

――ああ、これが恋人。

初めて知った甘い感覚に、私はただ身を委ねるしかなかった。
< 49 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop