明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
私はこの人が、とても優しい人に見えた。

軍服を着ているのに、子供に手を差し伸べる姿は温かくて、思わず見惚れてしまう。

すると父が、何気ない調子で口を開いた。

「この辺にお住まいですか。」

桐島様はすぐに姿勢を正し、穏やかに答える。

「はい。この呉服屋さんには、日頃からごひいきにさせていただいております。」

父に向き直り、深々と頭を下げた。

「申し遅れました。帝国軍人、中尉の桐島志郎と申します。」

その瞬間、胸がどくんと鳴った。

――桐島志郎。

心に刻み込まれるように、その名が響いた。

「これはご丁寧に。」

父もまた、思わず頭を下げていた。

父と対等に言葉を交わすその姿が誇らしく、そして眩しく見える。

ますますこの人から目を離せなくなっていく自分に、私は気づいていた。
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