明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
父は何を思ったのか、桐島中尉に向かって声を掛けた。

「もしよろしければ、今から我が家に来ませんか?」

私は内心、思わず目を見張った。

初対面の方を、こんなにもあっさりと家に招くなんて。

「お父様……」と小声で抗議するが、父は動じずに言う。

「いいんだ。帝国軍人だぞ。」

その言葉に、私ははっとした。

もしかして――父は軍人さんと懇意にしたいのだろうか。

家のために、軍との繋がりを求めているのだ。

父の思惑に気づいて、胸の奥がざわめく。

けれど桐島中尉は、あくまで穏やかな笑みを浮かべたまま、気づかないふりをしているようだった。

その落ち着いた姿に、私はますます目を離せなくなる。
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