明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
その日の帰り道、志郎さんは私を家まで送ってくれた。

門の前に立つと、彼は名残惜しそうに笑う。

「……今日は、ここまでですね。」

「はい……」

分かっていても、胸の奥に寂しさが募る。

そんな私の気持ちを見透かしたように、志郎さんはそっと頬に唇を寄せた。

「また、すぐに会えます。」

頬に残る温もりに、思わず目を潤ませながら頷く。

「……はい。」

短いやり取りなのに、心は甘く満たされていく。

ふと見ると、志郎さんが家の中を覗き込むように視線を向けていた。

「志郎さん……?」

「いや、失礼。……本当は、すぐにでもご両親にご挨拶したいくらいなんです。」

小さく笑いながらそう言う彼の表情に、思わず胸が高鳴った。

――志郎さんは、本気で私を妻にしようとしている。

その確信が、胸の奥に温かく灯った。
< 70 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop