明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「でも父は、最近忙しくて家にはいなくて……」

私がそう言うと、志郎さんは静かに頷いた。

「そうでしたか。……いいんです。時間がある時に、しっかりとお許しを頂きたいと思っているので。」

その真剣な口調に、思わず顔を上げてしまう。

「あの……私たちの仲のこと、ですか?」

声が小さく震えた。

志郎さんは一瞬だけ目を細め、そしてクスッと笑みをこぼす。

「結婚の許しですよ。」

「……!」

胸の奥に熱が広がる。

私はてっきり、隠してきた関係を咎められないように――と、そんなことばかり考えていたのに。

彼は最初から、未来を見据えていたのだ。

「雪乃、俺は君を妻にしたい。堂々と胸を張って、ご両親にそう申し上げたい。」

はっきりと告げられるその言葉に、胸が高鳴り、涙がにじんだ。

――こんなにも、真っ直ぐに想ってくれるなんて。

私は頷くことしかできず、彼の横顔をただ見つめていた。
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