明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「来るのでしょうか……そんな日が。」

思わずこぼれた言葉は、心の奥底の不安そのものだった。

「来ます。必ずそうします。信じてください。」

志郎さんは強い眼差しで言い切ると、私を抱きしめた。

「雪乃……君を想わずにいない日はない。」

「志郎さん……」

胸が熱くなり、涙が滲んでいく。

――その時だった。

「雪乃。」

背後から突然、父の声がした。

「お父さん!」

慌てて志郎さんから身を離す。

心臓が早鐘を打ち、頬がかっと熱を帯びた。

父は腕を組み、じっと私たちを見ていた。

「……こんなところで、何をやっているんだ?」

厳しい声音に、言葉を失う。

さっきまでの甘い余韻は跡形もなく消え去り、冷たい緊張が場を支配した。

横に立つ志郎さんが、一歩前へ踏み出した。
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