明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
「お久しぶりです。お父様。」

志郎さんは軍人らしく背筋を伸ばし、父に向かって敬礼をした。

「これは……桐島中尉じゃないか。」

父は目を見開き、志郎さんの顔をまじまじと見つめる。

「まさか、また会えるとは思っていなかった。」

驚きの声の奥に、どこか嬉しさのような響きがあった。

「はい。こうして再びお目にかかれたこと、光栄に存じます。」

志郎さんが深々と頭を下げる。

父はしばし黙ってから、ふっと口元を緩めた。

「……早く中に入り給え。」

「はい。」

志郎さんはすぐに頷き、私の隣に並んで家の中へと進んだ。

私は胸の鼓動が早くなるのを抑えられなかった。

――まさか、こんなに早く志郎さんと父が顔を合わせる日が来るなんて。

畳の上に並んで座る光景を思い浮かべただけで、背筋が伸びる。

これはきっと、私たちの未来を左右する大切な時間になる。

緊張に震えながら、私は父と志郎の背を追った。
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