明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
部屋へ戻ると、机の上に置いてあった小箱が目に入った。

そっと蓋を開けると、志郎さんから贈られた指輪が淡い光を放っていた。

「……志郎さん。」

胸の奥がきゅうっと痛む。

これこそが、彼が私にくれた永遠の証。

けれど――。

「もう、この指輪をつけることはないのだろうか……。」

呟いた途端、視界がにじみ、涙がこぼれ落ちた。

「うぅ……」

父の言葉が頭をよぎる。

お相手も私を気に入っている。

見合いに行けば、その場で決まってしまうだろう、と。

もしそうなれば、志郎さんとは……。

「もしかしたら……今度会うのが、最後かもしれない。」

嗚咽を漏らしながら指輪を握りしめる。

あの日、彼が膝をついて差し出してくれた光景が鮮やかによみがえった。

あの誓いは、ただの夢だったのだろうか。

涙で揺れる視界の中で、指輪だけが確かに光り続けていた。
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