明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
その瞳は真剣そのもので、私を決して逃がすまいとしている。

「見合いは……断るんだ。」

念を押すように、低く響いたその言葉。

私は涙をにじませながら頷いた。

「……はい。志郎さん。」

二人の誓いは、もはや誰にも揺るがせないものになっていた。

激しい想いを確かめ合ったあと、志郎さんはぐったりと布団に横たわり、穏やかな寝息を立てていた。

その寝顔を見つめると、胸が温かくなると同時に、切なさも募る。

私は乱れた着物をそっと整え、湯呑みを手に取った。

渇いた喉を潤すように一口含み、深く息をつく。

まだ体の奥には、彼の熱が残っていた。

その時、襖が開き、女将さんが顔を覗かせた。

「あら……寝入ってしまったのね。」

彼女の視線が布団へ向かう。

裸のまま眠る志郎さんを見て、女将さんは小さくため息をついた。
< 87 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop