明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
その時だった。

「雪乃! 何をしているんだ!」

父の鋭い声が門口に響き、全身が震え上がった。

振り返ると、父が険しい顔で立っていた。

「貴様……俺の娘に何をしている!」

父は力強く私から志郎さんを引き離した。

けれど、すぐにその顔が驚愕に染まる。

「これは……桐島中尉ではないか!」

志郎さんはすぐさま姿勢を正し、深々と一礼した。

「お父様。本日は結婚の申し入れをさせて頂きたく、参りました。」

「……えっ、結婚⁉」

父の声が震える。

予想もしなかった言葉に、驚きを隠せない様子だった。

「はい。」

志郎さんの声は一切揺るがなかった。

私は必死に父を見上げた。

「お父様……」

張り詰めた空気の中で、志郎さんの背筋は真っ直ぐに伸びていた。

――これが、彼の覚悟。
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