明治、一目惚れの軍人に溺愛されて
そしてその夜、志郎さんは私を家まで送ってくれた。

門口に立つと、彼は真剣な眼差しで問いかける。

「お父様は、いらしたか?」

「それが……まだ帰っていなくて。」

申し訳なさそうに答えると、志郎さんはすぐに頷いた。

「ならば……お帰りになるまで、待たせて頂いてもいいか。」

一切の迷いがない声音に、胸が震えた。

――本気なのだ。

思わず私は彼の胸に飛び込み、ぎゅっと抱きしめた。

「お父様に……殴られでもしたら……」

恐怖を押し隠しながら、震える声で呟く。

志郎さんは優しく頭を撫で、低く笑った。

「軍人たるもの、そんなものには慣れています。」

その強さと優しさに、胸が熱くなる。

「雪乃……俺は逃げない。」

耳元で囁かれたその言葉は、私の不安を少しずつ溶かしていった。

――この人なら。
どんな嵐が来ても、私を守ってくれる。

私は涙をにじませながら、彼の腕の中でただ頷いた。
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