この恋を運命にするために


 ロッカーの中は当然確認したけれど、確かになかった。
 それなのに突然私のロッカーからマジックのように現れたのだ。


「まさか、犯人が蘭さんだったなんて」


 その場にいる人物全員が私に疑いの眼を向けた。


「違います! 私じゃない!」
「後は署で話を伺いましょう」


 警察官の一人が私の腕を掴む。


「離して! 私じゃありませんっ!」


 その日、両親は別の仕事でこの場にはいなかった。
 兄は結婚して今はフランスにいる。

 私に味方してくれる者は一人もいなかった。
 誰もが私に非難の視線を向けていて、悲しかったし悔しかった。

 涙を堪え、唇を噛み締めることしかできない私を救ってくれたのが、あの人だった。


「ちょっと待ちたまえ。彼女は犯人ではない」


 その人は黒いスーツを見にまとった若い刑事だった。
 清潔感に溢れた若々しい見た目でありながら、妙な貫禄がある。


「家元のお嬢様、千寿蘭さんでしたね」
「は、はい」
「単刀直入に言いましょう、あなたは嵌められたのです」


 私は思わず唾を飲み込み、自信たっぷりな若い刑事を見返す。


「は、はめられた……?」
「ええ。私の推理はこうです――」


 淡々と論理的に語られたその推理は、とても明快だった。
 理路整然としており無駄がない。素人でもわかりやすく丁寧に、そして鮮やかに謎を解き明かしてしまった。


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