この恋を運命にするために


 魚に癒される信士さんを想像してひたすらときめく。
 魚に話しかけたりとかしてたら――やだ、かわいすぎるわ……!


「おっ、サメだ。かっこいいな」


 大きなサメに瞳を輝かせている信士さんだって、結構はしゃいでると思う。
 ああもう、こんな少年みたいなギャップもあるなんてずるすぎる。


「パパー!」


 その時、五歳くらいの男の子がドーン! と信士さんに激突してきた。


「!?」
「! パパじゃない……?」


 パパじゃないとわかった男の子は、途端に不安そうに顔を歪める。
 そんな男の子の前にしゃがみ込み、信士さんは優しく男の子の頭を撫でた。


「パパとはぐれちゃった?」
「うん……」
「そっか、パパどこに行っちゃったんだろうね。お兄さんと探そっか」
「パパさがしてくれるの?」
「もちろん」


 信士さん、初めて見るすっごく優しい笑顔――。
 子どもが好きなのかな。


「たいきー!」
「あっ! パパー!!」


 幸いにして男の子のお父さんはすぐに見つかった。
 急いでお父さんに駆け寄り、抱きつく姿を見てホッと胸を撫で下ろす。

 お父さんに何度もお礼を言われ、その親子とは別れた。


「あのお父さん、三十歳くらいかな? 信士さんもそれくらいに見えたんですかね〜」
「蘭さん、傷口を抉るね」
「あははっ! やっぱり気にしてたんだ〜」
「一応まだ二十代前半なんだけど」
「え、前半? 私二十四ですけど」
「同い年じゃん」
「えーっ!」


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