この恋を運命にするために

三輪目



 俺は旧華族の末裔であり、代々日本警察の中枢を担ってきた満咲本家の長男として生まれた。
 祖父は警察庁長官、父は刑事局長、二人の叔父はそれぞれ大阪府警本部長と福岡県警本部長。

 その他親族も皆警察関係者。
 母は警察官ではないが、法医解剖医で昔は父とともに事件を解決することもあったらしい。

 まあこのように先祖代々警察官になることを義務付けられた一族で、俺も弟も幼少期から立派な警察官になることを説かれていた。
 警察官になることは、自分自身の身を守るためでもあるとも言われていた。

 裏世界にも通じる満咲家は、絶大な権力を有するが故に時に命を狙われることもある。
 子どもの頃、誘拐沙汰に巻き込まれたこともある程だ。

 それ故に自身も警察官となり、自分を守る術を身につけることを余儀なくされるのである。

 そんな家系の長男として生まれてしまった俺は、物心ついた頃から父に他人を信用するなと教えられてきた。
 刑事とは人を疑う仕事、どんなに善人だとしてもその仮面の裏には悪意を隠し持っている可能性がある。

 どんな些細なことも疑え、小さな違和感も見逃すな。
 初対面の人間でも用心深く観察する癖が身についてしまった俺は、誰のことも信用できない人間になってしまった。

 信用できるのは家族とごく一部の親しい人間のみだという俺が、恋愛なんて向いているはずがなく。


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