この恋を運命にするために


 漆原さんは元々地方警察採用だったが、実績を買われて本部に呼び寄せられたという敏腕刑事だ。
 実際コンビを組ませてもらっていると、学ぶことが多々ある。


「今は都内の病院で働いてるよ」
「へー。奥さんとの出会いは何だったんですか?」
「知らねえよ! もう十年以上前だから忘れたわ」
「え〜それ忘れます〜?」
「うるせえ、栗田。とっとと戻るぞ」


 恥ずかしくて話したくない、という雰囲気がありありと感じたのでそれ以上は追及しなかった。

 結婚ねぇ……。
 俺はまだ自分の家庭を持つということが、どういうことなのかよくわからない。

 そもそも赤の他人と一緒に暮らさなきゃならないなんて、俺に耐えられるのか?


「漆原さんってお子さんはいくつでしたっけ」
「小四と小二だ。男兄弟だからやかましいぞ」
「一番遊び盛りって感じですね」
「全くだよ。凶悪犯を捕まえるより骨折れることもあるぞ」


 そうはいっても息子のことを語る漆原さんは、いつもより嬉しそうで穏やかになる。

 子どもは好きなのでいつか自分の子どもが欲しい、という願望はある。
 だが子どもは欲しいと思うのに、自分の隣にパートナーがいるということは想像できない。

 やっぱり当分結婚は考えられないな。


「……そういえば、展覧会のチケットをもらったな」


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