この恋を運命にするために


 良ければ是非来てください、と蘭さんから千寿流華道展覧会のチケットをもらった。
 俺以外の刑事にも展覧会のフライヤーを配っていたが、多分チケットを渡されたのは俺だけだ。

 下心は丸わかりだが……どうする?


「まあ、行ってみるだけ行ってもいいか」


 千寿流の生け花がどんなものか興味はあるし。


「信士さん! 来てくださったのですね」


 俺の顔を見ると、蘭さんはぱあっと表情を明るくさせた。
 小動物みたいで不覚にもかわいいと思ってしまった。


「仕事で近くに寄ったので。千寿流の生け花にも興味ありましたしね」
「どうぞゆっくりご覧になってください!」


 嬉しくて仕方ないという風で、声は弾んでいる。
 思っていることがそのまま顔に出る人なんだな。


「ご案内したいところなんですが、他にもお迎えする方がいまして……」
「私のことは気にしないでください」
「あ、はい。どうぞ楽しんでいってくださいね」


 あからさまに残念そうにしていた。
 もっと話したい、と顔に書いてある。

 本当に素直な人だな、と内心で笑いながら生け花を見て回った。
 花には詳しくないが、どの作品も見事だと思った。

 ある作品の前で足を止めた。
 蘭さんが生けた作品だった。


「……綺麗だな」


< 28 / 65 >

この作品をシェア

pagetop