この恋を運命にするために


 無意識に声に出してしまうくらい、美しかった。
 一輪一輪の花は繊細なのに、大胆でどこか力強さもあり生命力に溢れている。

 蘭さんらしい、と思った。
 彼女のことは大して知らないのに。

 ふと生けた本人に視線をやると、見知らぬ男に話しかけられていた。
 やはり顔に出やすい蘭さんは、あからさまに迷惑そうにしている。
 必死に笑顔を貼り付けて男の相手をしているのが滑稽だった。


「蘭さん、少しよろしいですか」


 俺が話しかけると、途端に表情が明るくなる。


「信士さん!」
「お花のことで聞きたいことがあるのですが、お話中ご迷惑でしたか?」
「あっ、いえ! 大丈夫です!」


 助け船を出されたのだとわかると、蘭さんは頬を染めてはにかむ。

 彼女の素直さは、お世辞ではなくかわいいと思う。
 職業柄人の裏側を探ろうとしてしまうが、蘭さんにはその必要がない。

 思っていることがそのまま顔に出ているからだ。
 そういう意味では彼女と話すのは気楽だと思った。


「好きです」


 だけど彼女の脈絡のない唐突さは理解できない。


「やっぱり信士さんのことが好きです。私じゃダメですか?」


 俺と君が会ったのは今日で二回目だろう。
 どうしてそんなに熱のこもった視線で俺に告白してくれるんだ?

 君にはもっと相応しい相手がいるはずなのに。


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