この恋を運命にするために
結論から言って犯人は展覧会に出展する華道家の一人だった。
前々から私に難癖をつけてくることが多く、私がメインの花を生けることが気に入らなかったらしい。
花瓶を盗んだ犯人に仕立て上げ、私を失脚させようとしていたのだ。
「あの、ありがとうございましたっ」
私は刑事さんにお礼を言った。
「いえ、当然のことをしたまでです」
刑事さんはにこやかに微笑む。
その笑顔に思わずドキッとしてしまった。
この刑事さん、よく見るとものすごくイケメンだわ……。
「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「私の? 名乗る程の者ではありませんが、こういう者です」
刑事さんは名刺を渡してくれた。
その名刺を見て驚く。
「警部さん!? お若いのに警部さんなんですか?」
「ええ、まあ。生意気にも警部をやらせていただいてます」
おどけた口調に何故かときめいてしまう。
「まんざきさん……?」
「みつさき、と読みます。満咲信士です」
その名前を聞いた時、私の全身を駆け巡る何かを感じた。
私の第六感がこの人だと告げている。
彼こそが、私の運命の人なのだと。
根拠もなければ今日初めて会った相手だ。
それでも私は勢いでプロポーズし、あっさりと撃沈するのだった――。