この恋を運命にするために


 結論から言って犯人は展覧会に出展する華道家の一人だった。

 前々から私に難癖をつけてくることが多く、私がメインの花を生けることが気に入らなかったらしい。
 花瓶を盗んだ犯人に仕立て上げ、私を失脚させようとしていたのだ。


「あの、ありがとうございましたっ」


 私は刑事さんにお礼を言った。


「いえ、当然のことをしたまでです」


 刑事さんはにこやかに微笑む。
 その笑顔に思わずドキッとしてしまった。

 この刑事さん、よく見るとものすごくイケメンだわ……。


「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「私の? 名乗る程の者ではありませんが、こういう者です」


 刑事さんは名刺を渡してくれた。
 その名刺を見て驚く。


「警部さん!? お若いのに警部さんなんですか?」
「ええ、まあ。生意気にも警部をやらせていただいてます」


 おどけた口調に何故かときめいてしまう。


「まんざきさん……?」
「みつさき、と読みます。満咲(みつさき)信士(しんじ)です」


 その名前を聞いた時、私の全身を駆け巡る何かを感じた。
 私の第六感がこの人だと告げている。

 彼こそが、私の運命の人なのだと。
 根拠もなければ今日初めて会った相手だ。

 それでも私は勢いでプロポーズし、あっさりと撃沈するのだった――。


< 4 / 65 >

この作品をシェア

pagetop