この恋を運命にするために
はっきりと告げられた言葉を聞いた時、言い表せない程の幸福感が心を満たす。
嬉しくて嬉しくて、きちんと返事をしたいのに涙が邪魔して何度も頷くのが精一杯だった。
「っ、うぅ……っ」
ハンカチを差し出され、目に当てるとあっという間にハンカチに涙が染み込む。
「うぅ〜〜……」
「あはは、かわいい」
「みないで〜〜」
ハンカチで顔を覆い隠そうとする私の額に、触れるだけのキスが落とされる。
「!?」
「あ、止まった」
「ひ、ひとがいるのに……っ」
「大丈夫、柱が死角になって見えないから」
そうは言ってもスタッフだっているのに。
だけど近づく顔を避けることはできなくて――そのまま唇が重なり合う。
「――蘭ちゃんは、泣いたり笑ったり素直だよね」
「……ふつうじゃない?」
「俺には普通じゃないんだ。他人の前で気を許せないから。気を許したら終わりだと思ってた」
「終わりって、流石に冗談よね?」
「割と本気。それだけウチは特殊な家系なんだよ」
信士くんが背負っているものは、きっと私なんかでは想像もできないくらい重いものなのだろう。
彼の抱えているものの半分も理解してあげられないのだと思う。
「でも蘭ちゃんは素直で真っ直ぐで裏表がないから――安心して一緒にいられる」
「信士くん……」
「そう思えた相手は初めてだよ」