俺が、私で、アイドルで - 秘密を抱いてステージへ
 スタジオに軽快な音楽が流れる。鏡の前に並んだ四人の姿を、振付師が鋭い目で見ていた。

「そこ! もっと腕を大きく振って! リズムを刻むだけじゃダメ、体全体で音を掴む!」

 陽大が「はいっ」と元気に返事をするが、動きは雑で空回り気味だ。
 悠生は無駄なく正確だが、どこか硬い。蒼は淡々としながらも、きっちりと形を決めていた。

 瞳は――必死についていっていた。
 足の運び、体のひねり、手の角度。頭で考えるよりも先に、音が体を導いてくれる。

「……おい、今の悪くなかったぞ」
 振付師の視線が瞳に向いた。
「基礎はまだまだだが、リズムを掴むのが早い。これは武器になる」

 瞳の心臓が跳ねた。
 ――私でも、できる。ここで、やっていける。

 隣から陽大がにやっと笑う。
「なーんだ、意外とやるじゃん、ヒトミ」

 悠生はタオルで汗を拭いながら肩をすくめる。
「ま、勢いだけで突っ走るお前よりはマシだな」

「うるせー!」
 陽大が叫び、蒼が小さく咳払いをして場を締めた。

「まだ始まったばかりだ。気を抜くな」

 瞳は鏡越しに自分を見つめた。
 汗に濡れた頬が赤く光っている。
 ――きっと、このステージでなら。私の“今”を全部、出せる
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