第零作★血文字の告白★
 終幕 ― 告白の意味(曖昧型)

 廃屋の地下室から見つかった小さな白骨は、DNA鑑定によって神谷家の娘と判明した。
 二十年の時を経て、ようやく「失踪事件」は「殺人事件」として立件され、元駐在の男が逮捕された。
 村は騒然となり、私は記事を仕上げることに没頭した。

 けれど、どうしても納得できない点が残っていた。
 壁に繰り返し刻まれていた「ゆるして」「ごめんなさい」。
 あれは確かに“新しい血”で書かれていた。
 だが、駐在の供述では「血文字など知らない」と言い張っている。

 ならば、あの夜、私を追い詰めた数々の文字は――誰が残したのか。

 取材を終えて帰宅した翌日、机の上に封筒が置かれていた。差出人不明。
 開けると、中には小さな紙切れが一枚。
 震える筆跡で、赤黒く滲んだ言葉が書かれていた。

 「ありがとう」

 胸の奥に冷たいものが走った。
 これは……娘の声なのか? それとも、誰かが私をからかっているだけなのか?

 窓の外を見ると、ランドセルを背負った小さな影が、夕闇の道をゆっくり歩いていくのが見えた。
 呼び止めようと立ち上がった瞬間、影は霧のように消えた。

 私はしばらく立ち尽くしていた。
 人の仕業か、幽霊の告白か。
 答えは誰にも分からない。

 ただ一つ確かなのは――血文字はまだ終わっていない、ということだ。
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