第零作★血文字の告白★
 終幕 ― 告白の意味(どんでん返し型)

 廃屋の壁に残された最後の血文字を見つめていた。
 そこには震える筆跡で、こう刻まれていた。

 「ほんとうのはんにんは――」

 私は答えを求め、さらに壁を探した。
 だが、その続きを書いたのは――私自身の指だった。

 気がつけば、手が勝手に動き、血で壁をなぞっていた。
 「……あ、ああ……やめろ……!」
 私は叫んだが、指は止まらない。

 そこに浮かび上がった文字は――

 「あいざわ」

 愕然とした。
 私の名前。私こそが“血文字の告白”の主だったのか。

 断片的な記憶が蘇る。
 二十年前、取材でこの村を訪れていた若き日の私。
 神谷家の娘に出会い、やがて……あの夜、酒に溺れ、取り返しのつかないことをしてしまった。
 駐在や村人たちは、それを隠蔽した。
 私は自分の罪を記憶の奥底に封じ込め、まるで何も知らぬ記者として生きてきたのだ。

 では、今まで追ってきた“血文字”は何だったのか。
 それは他者の叫びではない。
 ――私の中の「罪」が、無意識に刻ませていた。

 「ゆるして」「ごめんなさい」「たすけて」
 それはすべて、私自身の心の叫びだった。

 目の前の壁が揺らめき、娘の小さな影が現れた。
 血まみれの姿で、ただ私を見つめている。

 「やめてくれ……もう書きたくない……!」

 しかし、私の指は再び動き出す。
 止まらぬ血の告白。
 ――「ほんとうのはんにんは あいざわ」

 気がつけば、壁一面に私の名が埋め尽くされていた。
 嗚咽とともに膝をついたとき、少女の影が消えた。
 だが静まり返った廃屋に、まだ新しい血の臭いだけが漂っていた。
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