皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「正直に話してくれ。」

セドは静かにクラリッサ姫へと歩み寄った。

その声音は決して責めるものではなく、むしろ痛々しいほどの優しさを帯びていた。

「決して怒らないから。」

震える肩を揺らしながら、クラリッサ姫はエドガーを見つめ、それからセドに向き直る。

「……私とエドガーは、恋人同士です。」

その告白に、大広間の喧騒も夜の虫の声も、すべて遠のいたように感じられた。

セドの瞳に映るのは、ただ呆然とした自分自身の姿。

「でも……」クラリッサ姫は涙で濡れた顔を上げる。

「もう別れます。私はあなたと結婚します。」

義務と愛の狭間で揺れる彼女の言葉に、セドの胸は締めつけられた。

思わずその細い肩を抱きしめそうになり――しかし、寸前で自分を制する。

「……そうか。」

その一言を残すと、セドは背を向けた。

月明かりが彼の背中を照らし出す。

広い庭園に残された沈黙の中、セドの歩みは重く、しかし迷いのないものだった。

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