皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「夫人。教育が厳しすぎませんか。」

セドは真剣な顔で言った。その瞳は私を案じている。

夫人は扇子で口元を隠しながら、ふっと微笑む。

「でもね……それはエリナが望んでいることなのよ。」

思わずセドの方を見る。

そう――一日でも早く立派な公爵令嬢になりたい。

それが叶わなければ、セドの妃として隣に立つことはできない。

無理をしてでも努力し続けなければ、彼に会うことさえ許されないのだ。

セドはその想いを悟ったのか、夫人の前だというのに私を強く抱きしめた。

「……無理をしないでほしい。だが、そうじゃないと俺に会えないと思わせてしまったのなら……俺の責任だ。」

胸に響く彼の声に、私の瞳が熱く潤む。

セドは夫人を見据え、問うた。

「教育は……王宮では難しいですか。」

夫人は扇子を閉じ、少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。

「そうね……この子を手放すのは惜しいけれど。――夫に相談してみるわ。」

静かな決意が、その声音に滲んでいた。
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