皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
その夜、長い食卓に燭台が並び、セドを交えた夕食が開かれた。

銀の器に盛られた料理の香りが立ちのぼる中、夫人が穏やかに切り出した。

「ええ、エリナをまた王宮に?」

セドは頷き、真剣な顔で答える。

「はい。ここでは……エリナが無理をしてしまいますので。」

ルーファス公爵閣下はフォークを置き、眉間に皺を寄せた。

「しかし……また以前のように夜伽三昧になりませんか?」

「それは……」

セドは一瞬言葉に詰まり、困ったように視線を落とした。

けれどすぐに顔を上げ、力強く言う。

「……なんとかします。」

「殿下。」

公爵閣下の声には重みがあった。

「結婚前に子供はご法度ですよ。」

「気を付けます。」

セドは真っ直ぐに応え、その横顔に迷いはなかった。

夫人はそんなやり取りを見つめ、ふっと微笑む。

「本当に……皇太子殿下は、エリナが好きなのね。」

その優しい言葉に、顔が熱くなり、胸がじんと温かくなった。
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