皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「エリナ……俺は必ず――」

セドが再び誓いを口にしようとしたその時だった。

カツ、カツ、とヒールの音が近づく。

「まあ。」

涼やかな声が図書室に響き、私は飛び上がりそうになった。

扉口に立っていたのは、公爵夫人だった。

扇子で口元を隠しながら、目元だけで楽しそうに笑っている。

「図書室でなんて……まあ、大胆ね。」

「っ……!」

私は顔から火が出そうになり、セドの胸にしがみついた。

「夫人、これは……」

セドが口を開きかけるが、夫人はひらりと扇子を振った。

「弁解はいらなくてよ。愛し合っているのは見れば分かるもの。」

にっこりと笑みを浮かべ、私に視線を向ける。

「エリナ。令嬢としての教育は厳しくしても……恋の教育までは、私には無理そうね。」

「お母様……!」

恥ずかしさと感謝が入り混じり、胸がいっぱいになった。

夫人のざっくばらんな茶化しに救われる一方で、私とセドはただ互いの手を強く握り合った。
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