皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
王宮に戻り、自室の扉を開けた瞬間――懐かしい空気が胸を満たした。

見慣れた天蓋付きの寝台、机の上に置かれたランプ、窓から差し込む光。

一時的に離れていただけなのに、まるで帰郷したかのような安堵感に包まれる。

「エリナ。」

不意に背後から声がして、振り向いた。

「殿下……!」

そこにはセドが立っていた。

凛とした姿のまま、けれどその瞳はどこか少年のように輝いている。

「待ちきれなくて来てしまった。」

そう言って、彼は一歩で距離を詰め、私を抱きしめる。

胸に広がる温もりに、目頭が熱くなる。

「殿下……私、また殿下のお傍に……」

「おかえり、エリナ。」

耳元で優しく囁かれ、心の奥に沁み渡った。

「これからは、ずっとここにいるんだ。おまえの居場所は、俺の側だ。」

その言葉に、込み上げる涙をこらえながら、私は彼の背にそっと腕を回した。
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