皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「エリナ。」

抱き寄せたまま、セドが私の髪に口づけを落とした。

「妃教育は……辛いだろう。」

胸の奥を見透かされたようで、思わずぎゅっと唇を噛む。

確かに、礼儀作法も舞踏も簡単ではない。疲れ果てて倒れそうになる夜もあった。

「……はい。でも、必要なことですから。」

無理に笑おうとした瞬間、セドの手が私の頬を包んだ。

「無理はするな。」

その瞳は真剣そのものだった。

「俺が支える。おまえがどれほど苦しい時でも、隣にいる。だから一人で背負おうとするな。」

「殿下……」

熱がこみ上げ、思わず彼の胸に顔を埋める。

「ありがとうございます……。殿下がそう言ってくださるなら、私は……頑張れます。」

セドは優しく微笑み、私の額に再び口づけた。

「それでいい。おまえが俺の妃になる日まで、ずっと共に歩んでいこう。」

その言葉が胸に刻まれ、私は決意を新たにした。
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