皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「私は――自分の選んだ女性と結婚します。」

セドの宣言に、広間はさらにざわめきに包まれた。

本当はクラリッサ姫がセドを裏切ったのに、これではまるでセドが彼女を拒絶したかのようだ。

胸の奥に悔しさが込み上げる。

「おまえという奴は!」

怒り狂った国王は玉座を降りると、セドの目の前に立ち、拳を振り上げた。

乾いた音と共に、セドの頬が赤く腫れあがる。

「殿下!」

私は思わず駆け寄り、声を張り上げた。

「違うんです!クラリッサ姫には、別に――」

言いかけたその瞬間、セドが私の名を呼び、強く制した。

「エリナ、それ以上言うな。」

その瞳には、痛みを堪える強さと、何よりも私を守ろうとする意思が宿っていた。

セドはクラリッサ姫へと向き直る。

「美しい姫君……私は、あなたの幸せを望みます。」

その言葉は、静かな別れの宣告だった。

彼の優しさは最後まで揺るがず、だからこそ胸が締め付けられる。

私は涙を堪えながら、その背中をただ見つめるしかなかった。
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