皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
その日の湯浴みの当番は、私だった。
湯殿の中、私は湯船に熱い湯を注ぎながら、彼の背を見つめる。
惜しみもなく露わになった鍛え上げられた体は、皇太子という立場を忘れさせるほど力強く、けれどどこか疲れを滲ませていた。
「お湯加減はどうですか。」
恐る恐る問いかけると、セドは低く答えた。
「ああ、ちょうどいい。」
本当はぬるめを好むはずなのに、この日はやけに熱い湯を求めていた。
心の痛みを、熱さで誤魔化しているように思えてならない。
私は俯き、声を整えた。
「本日……クラリッサ姫は、自国へお戻りになりました。」
「それは、よかった。」
静かな返答に、胸が締めつけられた。
安堵と同時に、どうしようもない切なさがこみ上げる。
気づけば、頬を熱いものが伝っていた。
「どうして泣く?」
振り返ったセドが、そっと私の涙に触れた。
大きな掌が頬を撫でる。
その優しさに、私の心はさらに揺さぶられていくのだった。
湯殿の中、私は湯船に熱い湯を注ぎながら、彼の背を見つめる。
惜しみもなく露わになった鍛え上げられた体は、皇太子という立場を忘れさせるほど力強く、けれどどこか疲れを滲ませていた。
「お湯加減はどうですか。」
恐る恐る問いかけると、セドは低く答えた。
「ああ、ちょうどいい。」
本当はぬるめを好むはずなのに、この日はやけに熱い湯を求めていた。
心の痛みを、熱さで誤魔化しているように思えてならない。
私は俯き、声を整えた。
「本日……クラリッサ姫は、自国へお戻りになりました。」
「それは、よかった。」
静かな返答に、胸が締めつけられた。
安堵と同時に、どうしようもない切なさがこみ上げる。
気づけば、頬を熱いものが伝っていた。
「どうして泣く?」
振り返ったセドが、そっと私の涙に触れた。
大きな掌が頬を撫でる。
その優しさに、私の心はさらに揺さぶられていくのだった。