皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
国王から課せられた「大舞踏会でのお披露目」

それは、私にとって逃れられない最後の試練だった。

翌日から、私は一層厳しい妃教育に身を投じることになった。

「言葉遣いはもっと端正に。声の抑揚にも気を配りなさい。」

「舞踏のステップは優雅さを忘れてはなりません。」

「外交の場では、一言一句が国の威信を背負うのです。」

先生方の指導は厳しく、朝から晩まで休む間もなかった。

言葉遣いに詰まり、ステップを踏み間違え、何度も悔し涙をこぼす。

けれど、その度に支えてくれる人がいた。

「エリナ。」

練習で疲れ果てた私の背を、セドが優しく撫でる。

「無理をするな。おまえが頑張っていることは、誰よりも俺が知っている。」

公爵夫人もそっと手を握ってくれた。
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