皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
玉座の上からじっと二人を見下ろしていた国王は、やがて深く息を吐いた。

「……よかろう。おまえたちの想いが本物かどうか、試さぬわけにはいかぬ。」

広間に緊張が走る。

「最後の条件を与える。」

杖を軽く打ち鳴らし、国王は私とセドを鋭く見据えた。

「次の一月に開かれる大舞踏会において、エリナを皇太子妃候補として正式にお披露目する。その場で諸侯と各国の使節を納得させ、醜聞なく務めを果たせるかどうか――それが試練だ。」

周囲がざわめく。

「外交の場で……」

「並大抵の令嬢でも難しいのに……」

私は拳を握りしめ、震える声で答えた。

「……承知いたしました。必ずや、皇太子妃として恥じぬ振る舞いをお見せします。」

広間が息を呑む。

国王はしばらく無言で二人を見つめ――やがて低く笑った。

「……面白い。では見せてみよ。おまえたちの覚悟と愛の力を。」

その言葉に、未来への扉が大きく開かれたのを感じた。
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