皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そして、玉座の間には祝福の声がいっせいに上がった。
「皇太子殿下!」
「クラリッサ姫!」
私は胸の奥の痛みを必死に押し隠しながら、一生懸命に拍手を送った。
どうかこの結婚が上手くいきますように――そう祈りながら。
セドから婚約の話を聞いたのは、ほんの一か月前のことだ。
「とても美しい姫君なんだ。」
その時の彼の声音は穏やかで、どこか夢を見ているようだった。
私はてっきり一目惚れなのだと思った。
皇太子殿下付の侍女になって以来、彼が女性を語るのを聞いたのは初めてだった。
誠実で、国のために生きることしか考えていないような殿下が、誰かを「美しい」と口にする。
その事実に胸がざわついた。
けれど、同時に安心もしたのだ。
これで殿下が幸せになるのなら、私の想いなど影に隠れて構わない。
初恋の人が他の誰かを見つめる姿を、私はただ侍女として見守る。
――それが自分に許された唯一の役割だと、その時は信じていた。
「皇太子殿下!」
「クラリッサ姫!」
私は胸の奥の痛みを必死に押し隠しながら、一生懸命に拍手を送った。
どうかこの結婚が上手くいきますように――そう祈りながら。
セドから婚約の話を聞いたのは、ほんの一か月前のことだ。
「とても美しい姫君なんだ。」
その時の彼の声音は穏やかで、どこか夢を見ているようだった。
私はてっきり一目惚れなのだと思った。
皇太子殿下付の侍女になって以来、彼が女性を語るのを聞いたのは初めてだった。
誠実で、国のために生きることしか考えていないような殿下が、誰かを「美しい」と口にする。
その事実に胸がざわついた。
けれど、同時に安心もしたのだ。
これで殿下が幸せになるのなら、私の想いなど影に隠れて構わない。
初恋の人が他の誰かを見つめる姿を、私はただ侍女として見守る。
――それが自分に許された唯一の役割だと、その時は信じていた。