皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「皇太子殿下、どうされたんですか!」

私たちが馬から降りているのを見て、近衛のアルキメデスが駆け寄ってきた。

「エリナが怪我をしたんだ。」

セドが短く答えると、アルキメデスは驚いたように目を見開き、すぐさま馬から飛び降りてきた。

「えっ……怪我?」

心配そうな声に、私は慌てて首を振る。

「大したことはありません。本当に、少し擦れただけで――」

けれどアルキメデスの視線は、私の手に巻かれた布に釘付けになった。

そこには王家の紋章がくっきりと刺繍されている。

「それ……皇太子殿下の……」

彼の言葉に、心臓が跳ね上がる。

思わず私は手を背に隠すように後ろへ回した。

頬が熱くなる。

アルキメデスの瞳に浮かんだ複雑な色を、見なかったことにした。

セドの手当てが、ただの主従を越えたもののように映ってしまったのだろう。

息が詰まるような沈黙が、三人の間を覆った。
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