皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
その時だった。空から冷たい雫が落ち、あっという間に雨粒が大地を叩き始めた。

「うわっ!降ってきた!」

思わず声を上げると、アルキメデスも顔を上げて苦笑した。

「強いですね……」

彼はすぐに周囲をきょろきょろと見渡し、やがて一本の大木を指差す。

「あそこなら雨をしのげそうだ。行きましょう!」

アルキメデスは馬の手綱を引き、私たちをその下へと導いた。

大きな葉が枝いっぱいに茂り、打ちつける雨を受け止めてくれる。

「助かりました……」

胸を撫で下ろしながらつぶやくと、アルキメデスはにっと笑った。

「止むといいですね。」

そう口にして私は、ちらりとセドの方を見た。

強い雨に打たれて、殿下の額から髪が濡れて頬にかかっている。

その姿が妙に儚げで、胸が締め付けられた。

思わず手を伸ばしかけたけれど、すぐに引っ込める。

侍女に過ぎない私が触れていいものではない――そう自分に言い聞かせながら。
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