皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「風邪を引かれたらどうしよう……」

そうつぶやきながら、私は着ていた上着をそっと脱ぎ、殿下の頭上にふわりと被せた。

驚いたようにセドが目を瞬かせる。

「髪が濡れています。」

そう告げると、セドはゆっくりと私の上着を外し、手の中で握りしめた。

「俺は大丈夫だ。鍛えているからな。多少濡れても風邪は引かない。」

強がるような声音。

けれど濡れた髪と頬が、どこか痛々しく見える。

私は思わず彼を見つめた。

本当は、ただ心配しているだけなのに――。

立場も身分も関係なく、初恋の人を想う気持ちは止められない。

胸の奥からこみ上げる切なさに、唇を噛みしめる。

けれどセドがふと私の視線に気づき、柔らかな眼差しで見返してくれた。

その一瞬、胸の鼓動が高鳴り、雨音さえ聞こえなくなるほど、世界が彼と私だけのものに思えた。
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