皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
すると、隣にいたアルキメデスが私にハンカチを差し出してきた。

「エリナも、髪が濡れていますよ。」

「あ、私は大丈夫です。」

慌てて断ろうとすると、その手からセドがハンカチをすっと取り上げた。

「殿下……?」

驚く私をよそに、セドは無言で私の髪を拭き始める。

濡れた髪を優しく指でほどきながら、丹念に水気を拭ってくれる。

「で、殿下!」

あまりの近さに心臓が跳ね上がる。

「お前こそ、風邪を引いたらどうするんだ。」

低い声に滲む叱責と、隠しきれない心配。胸の奥がじんわり温かくなる。

「……優しいですね。殿下は。」

思わずそう口にすると、セドは一瞬驚いたように私を見つめ、それから微かに微笑んだ。

私はその表情に堪えきれず、にっこりと笑顔を返した。

ただそれだけなのに、雨音の中で心が弾む。
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