皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
そして私は、不意に「くしゅん」と小さなくしゃみをしてしまった。

「言わんことか。」

セドが呆れたように眉をひそめる。

「へへ……」と誤魔化すように笑ったその瞬間だった。

セドが大きな腕を伸ばし、私を抱き寄せた。

驚きで息が止まる。

私の小さな上着の中に引き寄せられるように包まれ、彼の体温と鼓動が直に伝わってくる。

「これなら冷えないだろ。」

耳元で低く響く声に、胸が震えた。

ドキドキ……と規則正しく刻まれる音が、まるで私の心臓と重なっているように聞こえる。

こんなに近くで殿下を感じられるなんて――夢のようだった。

ちらりと横目をやると、アルキメデスは気を利かせたのか、わざとらしくそっぽを向いている。

気まずさと感謝が入り混じり、頬がさらに熱くなった。

ああ、こんな幸せな時間があるなんて。

叶うはずのない初恋だと思っていたのに、今は彼の腕の中にいる。

それだけで、世界が輝いて見えた。
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