皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「そう言われてみればエリナは、俺がスクールに通っている頃から、ずっと側にいてくれたんだな。」

セドが懐かしむように微笑む。

ああ、そう――。まだ学生だった彼は、貧しくて学校に通えない私を気にかけ、こっそりと読み書きや算数を教えてくれた。

古びたノートと木炭の筆記具を前に、並んで机に向かった日々。

あの頃は、ただ「友人ができた」と嬉しくて、彼の隣にいられることが誇らしかった。

「セド。」

自然と名前を呼んでしまう。

唇から零れ落ちたその響きが懐かしく、胸を締めつける。

まだこの方が皇太子殿下になるなんて知らなかった。

気兼ねなく名前で呼び合い、笑い合った時間。

あの日々はもう戻らないけれど、今もこうして心の奥に鮮やかに残っている。

私はそっと彼を見上げた。あの時の少年と、目の前の皇太子が重なって見えて――

胸の奥で初恋が再び芽吹いてしまうのを、止められなかった。
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