皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「エリナ。」

名を呼ばれて、思わず肩が震えた。

顔を上げると、セドの真剣な眼差しがまっすぐに私を射抜いている。

「これからも……俺の側にいてくれないか。」

雨音が激しさを増し、二人を包み込むように響く。胸の鼓動まで聞こえてしまいそうで、息が詰まる。

「セド……」

掠れた声で名を呼ぶと、彼は切実な声で重ねた。

「お願いだ。」

次の瞬間、私は強く抱きしめられていた。

濡れた上着越しに伝わる体温に、心が揺さぶられる。

ずっと――ずっと側にいたい。けれど。

今回のことで、嫌というほど分かってしまった。

皇太子の隣に立てるのは、結婚を許された者だけ。未来の王妃だけ。

「私は……ただの……皇太子付の侍女の一人です。」

声に出した瞬間、胸の奥がずきりと痛む。

セドの腕の温もりが、かえって遠く感じられてしまうのだった。
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