皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「今回もまた姫君ですか。」

セドは淡々と、しかし明らかに冷ややかな声音で答えた。

「今回は気に入らないでは済まされないぞ。」

国王の声には苛立ちが滲んでいた。

息子の気持ちを分かっていながら、王として譲れぬ思いがあるのだろう。

「俺が縁談を受けないと言ったら……どうするんですか。」

セドが低く呟く。場の空気が一瞬凍りついた。

「馬鹿なことを言うな!」

国王は玉座から立ち上がり、杖を強く突き鳴らす。

「これ以上、皇太子に相応しい女がいるか!お前の感情などで国を揺るがすつもりか!」

その言葉にセドは一歩も引かず、鋭い視線で父王を見据える。

けれど次の瞬間、国王の手が軽く振り上げられ、ぴしゃりとセドの頭に振り下ろされた。

「っ……!」

鈍い音に、私は思わず息を呑む。

国王の叱責よりも、その仕打ちに耐えるセドの姿が胸を締めつけた。

冷ややかに受け答えながらも、本当は苦しんでいる――その横顔を、私はただ見つめるしかなかった。
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