皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
するとセドはふっと笑みを浮かべた。けれど、それは決して明るいものではなかった。

「もし今回も……クラリッサ姫みたいに、恋仲の人がいたらどうするの?」

「えっ……」

思わず言葉を失う。

掴んでいたはずの私の手を、セドは自ら外した。

「もう俺、そういうの……嫌なんだ。」

かすれた声に、胸が痛んだ。

あの夜の傷が、まだ彼の心に深く残っているのだ。

「そんな! まだ決まったわけじゃ……」

必死に否定しようとしたけれど、セドは小さく首を振った。

「俺は……自分の結婚相手くらい、自分で見つけたい。」

強い眼差しに込められた切実な願い。

国や家のために縛られてきた彼が、初めて自分の心を吐き出したのだと思った。

――ああ、そんなに傷ついていたなんて。

今すぐにでも抱きしめてあげたい。

けれど私はただの侍女。手を伸ばすことも、想いを伝えることも許されない。

ただ胸の奥で震える気持ちを、必死に押し殺すしかなかった。
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