皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
セドが静かに私の前に立った。その瞳には怒りも苛立ちもなく、ただ深い哀しみが宿っていた。

「それは……無理に誘って、すまなかった。」

そう言って、彼はなんと私に頭を下げた。皇太子殿下が、一介の侍女である私に。

「殿下、頭を上げてください!」

慌てて声を上げると、セドはゆっくり顔を上げ、優しい眼差しを向けてくれた。

「いいんだ。気にするな。」

胸の奥にじんわりと温かさが広がる。本当に、断れたのだ――あの皇太子殿下に。

「あの、私……」

言いかけると、セドは軽く首を振った。

「いや、俺が急ぎ過ぎた。……“初恋の相手”だと言われて、勝手に盛り上がっただけだ。」

唇にかすかな笑みを浮かべながら告げられる。

その微笑みは切なくも優しくて、見ているだけで胸が締め付けられた。

ああ、この方は――どこまでも誠実で、優しい。

だからこそ、私の想いはますます深くなっていくのだった。
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