皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「断れるの?」

私がそう問い返すと、アルキメデスは真剣な眼差しで言った。

「今だったら、間に合うんじゃない?」

今なら――。その言葉に体が震える。

「何も、気乗りしない夜伽に行くことはないよ。」

そう言い残し、アルキメデスは私を置いて走り出した。

「アルキメデス!」

慌てて後を追うと、ちょうど廊下の先でセドの背を追いつき、彼を立ち止まらせていた。

「皇太子殿下、今夜の夜伽は中止です。」

「……え?」

振り返ったセドが、信じられないという顔で私を見た。

「彼女、体調が悪いと。」

アルキメデスの声は落ち着いていたが、その言葉の裏に確かな意志を感じた。

(どうして……こんなことを……)

私は胸を押さえた。セドの視線が私を射抜く。

疑念、驚き、そして微かな怒りが入り混じったその眼差しに、全身が熱くなった。

言いたいのに、声が出ない。

――本当は、私自身がどうしたいのかを。
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