皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「ダメだな。恋に焦りは禁物なのに。」

セドは小さく肩をすくめ、クスっと笑った。

その笑顔は、肩書きを背負う皇太子殿下ではなく、私の知っているいつものセドだった。

「恋って……」

思わず呟くと、彼は迷いなく言葉を重ねる。

「いや、恋だろ。」

その一言に、私は目を見開いた。セドが、ぽかんとした顔で私を覗き込む。

「俺もエリナが好き。エリナも俺を好き。だったら両想いじゃないか。」

「えっ……」

頭が真っ白になった。顔が一気に熱を帯び、頬が燃えるように赤くなる。

セドが、私を好き……?
そんな、まさか――。

「ま、まさか……!」

口ごもる私に、セドは唇の端を上げて軽く笑う。

「まさかって……俺の気持ちを否定すんの?」

その言葉と表情は、皇太子殿下としてのものではなかった。

権威も立場も取り払った、ただの青年――私が幼い日から知る友人のセドの顔をしていた。

胸が高鳴り、涙が滲みそうになる。

ああ、やっぱり私の初恋の人は、ずっとあの時のセドのままなのだ――。
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