皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました

第4章 覚悟と誓い

その日の湯浴み当番は、また私だった。

あの夜伽の誘いを断ったというのに、セドは責めることもなく、いつもと変わらぬ態度で迎えてくれる。

――やはり、本気で私と恋をしようとしているのだろうか。

そんな疑問が胸に残ったまま、私は湯を張りながら声をかけた。

「お湯加減はいかがですか。」

「……ちょうどいい。」

短く返す声に、思わず胸を撫で下ろす。

よかった――。以前のように、ぬるめの湯を好む殿下に戻っている。

あの時の熱い湯は、心の痛みを隠すためだったのだと思うと、切なくも安堵の気持ちが込み上げた。

「ふう……」

セドは肩まで湯に浸かると、ゆっくりと息を吐き、視線を窓の外へ向けた。

そうだ、殿下は昔から窓の外を眺めるのが好きだった。

狩りへ出かける前も、剣を振るう前も、必ず空を見上げていた。

(ああ……以前の殿下が、戻ってきている。)

その横顔を見つめながら、胸の奥に静かな温かさが広がっていくのを感じた。
< 46 / 151 >

この作品をシェア

pagetop