皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「皇太子殿下、この前のお誘いの件ですが……」

湯気に包まれた浴室で、私は思い切って切り出した。

でも、誤解だけはしてほしくない。

私は、殿下に抱かれることが嫌なのではない。ただ――心の準備ができていないだけ。

「ああ、いいんだ。気にするな。」

セドは穏やかに微笑む。その優しさに胸が熱くなり、思わず私はそっと彼の手を握った。

「心の準備ができるまで……もう少し、待ってください。」

震える声でそう告げると、セドは静かに頷き、私の額にそっと唇を落とした。

温かい感触に、全身が熱くなる。

「セド……」

思わず名を呼ぶと、彼は真剣な瞳で私を見つめる。

「いくらでも待つ。エリナが俺のものになるのなら。」

その言葉は力強く、同時に優しくて、涙が溢れそうになった。

どこまでも誠実に、私という一人の女を求めてくれる。

その想いに胸がいっぱいになり、私は彼の手を握り返すしかできなかった。
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