皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
湯船からセドがゆっくりと立ち上がる。

水滴が筋肉の上をつたって落ちていく様子に思わず息を呑んだ。

私は慌ててバスタオルを広げ、その均整の取れた体を包み込むように水気を拭った。

「相変わらず……均整の取れたお身体でございますね。」

自分でも声が震えているのが分かる。

すると、セドの腕が私を強く引き寄せた。

「この身体に……抱かれてみたくなったか。」

かぁーっと顔が熱くなる。心臓が耳元で鳴り響くようだった。

「い、いつでも言ってくれ。」

耳元に落とされる低い囁き。

「エリナが俺を選んでくれ。」

切なさに胸が震えた。もう心は、セドしか想っていない。

けれど口にする勇気が出ない。立場も理性も、私を押しとどめる。

それでも――彼の温もりの中で、体の奥まで満たされていくような幸福を感じていた。
< 48 / 151 >

この作品をシェア

pagetop