皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
翌日、盛大な祝宴の夜会が開かれた。

煌びやかなシャンデリアの下、クラリッサ姫とセドが舞踏を披露する。

二人の優雅な姿は絵画のようで、見守る誰もがため息を漏らす。

これこそ未来の王と王妃の姿――私は侍女の一人として壁際に控え、ただ見守るしかなかった。

「エリナ、踊ろう。」

不意に差し伸べられた手に、思わず顔を上げる。

アルキメデスだった。

「おい、私は踊れないぞ。」

慌てて言い返す私に、彼は軽やかに笑った。

「俺に任せればいいんだよ。」

そう言って強引に手を引かれる。

気づけば、音楽に合わせて体が動かされていた。

侍女として舞踏に加わるなどあってはならないはずなのに、アルキメデスの腕の中では抗えない。

「アルキメデス……」

友人だったはずの彼が、今は真っ直ぐに私を見つめている。

その瞳に宿る感情に気づき、心臓が早鐘を打った。

私は視線を逸らすことしかできなかった。
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