皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「さきほど、皇太子殿下とお会いしてね。」

「殿下と?」

思わず聞き返した。珍しい……公爵閣下と殿下が直接お話しになるなんて。

「しばらく会わないうちに、セドリック殿下は――エリナに夢中なんだね。」

「えっ……」

一瞬で顔が熱くなる。まさか……セドが私に夢中?そんなはず……。

「ずっとエリナの話ばかり聞かされたよ。」

公爵はおだやかに笑う。

「ど、どんなお話を……?」

声が上ずる私に、公爵閣下はクスっと含み笑いを漏らした。

「よく泣くんだって? 殿下を抱きしめて。」

「きゃっ!」

思わず声が裏返り、両手で頬を覆った。どうしてそんなことまで……!

あの時、殿下を慰めたことを、殿下は……まさか公爵閣下にまで話していたなんて。

心臓が早鐘のように鳴り、まともに顔を上げることすらできなかった。
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